2010年7月27日火曜日

マグロをめぐる国際シンポジウム

ドーハの会議が終わって、マグロ禁漁の話題がすこし下火になっていますが、漁業資源としてのマグロが危機的な状況にあるのは変わっていません。一方、海の 食物連鎖の頂点に立つマグロのことですから、漁業資源としてではなく海の生態系としてこの問題をとらえる必要があるようです。

WWFが主催する「消費者と考える国際マグロシンポジウム 日本の食卓が地球環境を変える」というイベントが8月3日に行われます。私も参加登録をしました。
内容は下記です。
(WWFホームページより)
============
WWF の国際的なネットワークを通じた海外のマグロ漁獲国や、日本の主要なマグロ生産者からの現地報告、日本の漁業問題の窓口でもある水産庁の関係者にも 講演いただき、消費者としてどう取り組むことが必要かを一緒に考えます。消費者である私たちひとりひとりの行動が地球環境の問題を解決する力となります。
■講演
「食卓から見たマグロ~マグロの基礎知識」
緑川聡 (社団法人 漁業情報サービスセンター流通課主査)
「国内外のマグロ資源管理の現状と課題」
宮原正典 (水産庁資源管理部審議官)
■報告
「WWFの考えるマグロと環境問題」
山内愛子 (WWFジャパン 水産担当)
「地中海におけるクロマグロ漁業の歴史とその危機」
スサナ・サインズ・トラパガ(WWF地中海オフィス担当)
「壱岐のマグロ一本釣り漁の現場から」
松尾五郎、大久保晃 (長崎県壱岐一本釣り漁師)
「大間のマグロ一本釣り漁の現場から」
濱端廣文 (青森県大間漁業代表理事組合長)
「中西部太平洋:持続可能なマグロ漁業推進プロジェクト」
ホセ・イングルス(Jose Ingles :WWFコーラルトライアングル担当)
■パネルディスカッション
「日本の消費者にしてほしいこと。これからの持続可能なマグロ消費の展望」
話題提供:マーク・パウエル (WWFインターナショナル)
ファシリテーター:東梅貞義 (WWFジャパン)
===========
どれも、興味深い内容ですね。

興味のある方は、是非参加してください。

MSC認証のカツオが食べられるようです。
参加費は1,000円。
申し込みは30日までです。
詳しくはWWFのWebサイトで。

2010年7月15日木曜日

マグロの子を食べるな!

日本人は魚の卵が大好きだ。

数の子、イクラ、すじこ、たらこ、ひめこ・・・・
様々な魚の卵を食べまくる。

卵を食べちゃったら魚は減るよね。
減るはずだよね。
ということで、数の子の親のニシンは、日本沿岸ではほとんど絶滅した。
いまではカナダ産やアラスカ産などを輸入している。

イクラだって激減している。
日常何気なく回転寿司なんかで食べているイクラのほとんどは人工イクラだ。
油と海草エキスを主成分にして作るらしい。

タラコだって日本沿岸では激減し、ほとんどが輸入頼りだ。

ところで、マグロ子って食べたことないよね。
珍味にもないか。と思ったら「珍味マグロのたまご」って言うのがありました。
食べるんだ。マグロの卵。


で、今日の話は卵ではなく、クロマグロの子供。ヨコワという幼魚です。

三重大学の勝川俊雄先生によると、近年日本海では巻き網漁によってヨコワを大量に捕獲しているとのこと。
親魚になって産卵する前に巻き網でそれこそ一網打尽にしてしまうため、大型をねらう一本釣りではどんどん大型が釣れなくなってきているという。

先生の試算によれば、ヨコワ漁161万尾は4,856トンでおよそ27億円の水揚げとんっている。
これが、4年待ってマグロになってから56万尾捕獲すれば、29,547万トンで408億円。

さらに2年待って一本釣りの対象になるまで大型にすれば、47万尾で43,959万トンで2235億円。
6年間休漁するだけで2000億円以上になる資源を、100分の1の価値でとりつくそうとしているらしい。
コヨワ漁6年分の漁業補償はおよそ180億円。
年間の水産関連予算3,500億円に比べたら微々たるもの。
補償して禁漁にしてしまえばいいのだ。
ところが、予算の大半は港湾整備などの土木工事に消えてしまい、水産資源の将来投資には回らないのだという。

役人のビジョンのなさと漁業関係者の目先重視が、日本近海からクロマグロの親魚を絶滅させているのだ。

勝川先生の声に耳を傾けよう。



このブログはフィッシュサステナビリティについて書いています。

勝川先生のブログはこちら。

2010年7月6日火曜日

「沈黙の海」イサベラ・ロヴィーンさん

10月に名古屋で開催されるCOP10の100日前に当たる7月3日、ヨーロッパにおける水産資源の枯渇を告発したジャーナリスト、イサベラ・ロヴィーンさんが講演会をおこなうというので、出かけてみた。
スウェーデン近海のバルト海などにおける、鱈の激減の原因を科学的に立証してみせた。最大の要因は幼魚を食べてしまうこと。産卵できる親魚になる前に食べてしまうのだ。それでは減る一方なのはあたりまえだ。

人間は食物連鎖の上から下に向かって補食するらしい。
つまり、大きな魚から順に食べ尽くしていく。バルト海では鱈が食物連鎖の最上位にあり、いまそれを食べ尽くそうとしている。日本人が巨大なクロマグロや南マグロから食べ尽くすのと同様に。実際、畜養が盛んになるまでは、クロマグロの代わりにそれまで食べなかった「メバチ」や「キハダ」を刺身で食べていた。いずれ海の中は、中型魚~小型魚と食べ尽くし、海の資源で食べられるのは「クラゲ」と「プランクトン」になってしまうのだそうだ。

こんなことになった原因は5つ。
1.海で起こることは一般の人の目に付きにくい。
2.漁業が環境問題の視点からでなく、食糧問題、経済問題からしか論議されない。
3.共有地の悲劇=海の魚はみんなのものという意識から、規制が役に立たない。
4.経済活動の側面からしか考えないロビー活動団体。
5.漁業がうまくいかなくても助成金がある。

私たちの支払っている税金が、魚を減らすための助成金となり、目先の利益しか考えない団体の保身のために使われている。のだろうか。

いずれにしても私たちはただ、マグロが食べたい。やすく食べたい。たくさん食べたい。と、言っている場合ではないらしい。

フィッシュサステナビリティーを真剣に考えないといけない。

そうそう、最後にもう一つ、日本人がこんなに日常的にマグロを食べるようになったのは、ここ10年くらいのことで、かつては特別な日だけに食べていたものだと彼女もいっていた。
マグロを食べるのが日本の伝統的な食文化などというのは、ちゃんちゃらおかしいのだ。


イサベラ・ラヴィーンさんの「沈黙の海